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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)779号 決定 1963年2月25日

抗告人 高橋譲

主文

原決定を取消す。

本件競落はこれを許さず。

理由

本件抗告の理由は、抗告人(債務者兼所有者)は債権者株式会社三協から昭和三十七年十二月二十一日の競売期日を延期する旨承諾を得たにかかわらず、債権者は右延期の手続をとることなく、競売を進行せしめ本件競落許可決定が言渡された。よつて抗告人は不服であるから抗告したというのである。

職権によつて案ずるに、記録によると、抗告人は債権者を相手方として、本件抵当権の被担保債権の弁済につき東京北簡易裁判所に調停の申立をし、本件競売手続停止を申立てたところ昭和三十八年一月二十二日同裁判所において右調停事件(同裁判所昭和三十七年(ノ)第一三九号)の終了に至るまで競売手続を停止する旨の決定をし、抗告人は昭和三十八年一月二十三日右決定の正本を原裁判所に提出したことが明かである。本件競落許可決定のあつたのは昭和三十七年十二月二十二日であるから、右停止決定の正本が原裁判所に提出されたのは右許可決定の言渡のあつた後に属すること明らかである。しかし抗告裁判所は抗告の裁判をなすに至るまでに生じた事情を斟酌すべきであるから、右停止決定正本の提出により本件競売手続は続行することができない。よつて、民事訴訟法第六八一条第二項、第六七二条第一号により本件競落許可決定は取消すべきものである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 鈴木忠一 谷口茂栄 加藤隆司)

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